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「頼和記念館」と「楊逵文学記念館」 (2008.11.16)

   
     
 

2. 楊逵文学記念館

 

 

楊逵文学記念館

「楊逵文学記念館」は台湾南部の台南県新化鎮にあります。この文化館は、新化出身の台湾新文学の大家・楊逵氏を記念して作られました。楊逵氏の本名は、同じ楊に貴族の「貴」と書く「楊貴」といいます。楊逵というペンネームを授けたのは台湾新文学の父・頼和氏です。彼らはいずれも日本統治時代に生まれ、一般大衆の生活を描いた作品を多く残し、雑誌を出し、社会運動に参加し、またペンによって投獄された経験を持つ、非常に共通点の多い作家です。一つだけ大きく異なるのは、日本統治下の台湾で早世した頼和氏に対し、楊逵氏は戦後、知識人などを対象とした白色テロの迫害に遭い、12年間もの間拘禁されていた事です。

 

(台南県新化鎮役場の鄭道立・主任秘書のお話)

 

楊逵文学記念館

楊逵先生は、人道的な社会主義者である事を自認していました。楊逵先生は、まだ小学生だった1915年、同じ台南県で発生した抗日運動・西来庵事件を目の当たりにし、また、お兄さんが戦争の為に連れて行かれるといった経験を通して社会の不公平さを強く感じ、社会主義運動に参加するようになりました。しかし、そうした運動は抑圧され、楊逵先生は文学を通じて自身の考え方を表明するようになります。1932年に日本語で発表された楊逵先生の代表作『新聞配達夫』は、雑誌『文学評論』に2位入選を果たしています。この時、1位は該当作品無しでした。元々は日本語で執筆活動をしていましたが、戦後の1949年、「和平宣言」を発表したことにより捉えられ、12年間の投獄生活を経験します。この「和平宣言」とは、1947年に発生した大規模な流血事件・228事件で逮捕された人たちを釈放し、国民党と共産党の内戦を平和的方法で解決する事を訴えたものでした。これ以降、楊逵先生は標準中国語での執筆を始めます。出獄後、台湾中部の台中県台中市に大きな庭園を作り、鋤や鍬を手に作家活動を続けました。先生の作品には、家庭、そして現実の生活を重視する作風が滲み出ています。

 

「楊逵文学記念館」の設立に力を尽くしたのは、地方の文学と歴史の研究に携わる康文榮さんという男性でした。地元の新化を代表する人物を探していた康文榮さんは偶然、楊逵氏の遺族から台南市内の国家台湾文学館に寄贈された楊逵氏の手書き原稿などを目にし、楊逵氏の文学の世界に引き込まれます。そして10数年前に、現在の記念館からほど近い所に「楊逵園」を作り、楊逵氏の作品を紹介し始めました。やがて康文榮さんの努力が地元政府の目に留まり、「楊逵文学記念館」の設立に至りました。

 

(台南県新化鎮役場の鄭道立・主任秘書のお話)

 

楊逵文学記念館

康文榮さんは、新化鎮役場に楊逵先生の国際的地位などを熱心に説明し続けました。そして役場は康文榮さんの意向に全面的に賛同、空き家となっていた新化の元土地行政事務所を提供してくれる事になりました。増改築は、ベネチア・建築ビエンナーレに出展した事もある著名な建築家・劉國滄氏にお願いしました。劉氏の日本風のモダンな設計で、古い建物が生まれ変わりました。

 

「楊逵文学記念館」は、二階建てです。一階部分では、地元の新化との関連性を重視しながら、楊逵という一人の作家の人生を紹介しています。二階部分では、「楊逵の文学における実践」と「楊逵の一生と社会参与」をテーマに、小説をはじめとする様々な作品を展示しています。

 

(台南県新化鎮役場の鄭道立・主任秘書のお話)

 

楊逵文学記念館

記念館では、地元の人々を対象とした定期的なイベントも行っています。小・中学生による楊逵先生の作品名にちなんだ音楽会や、楊逵先生の生誕を祝う10月の特別イベントなどです。10月の記念イベントでは、楊逵先生の残した「若者よ、共に走ろう、民主の新しい楽園に向かって」という名言にちなんで行うマラソン大会も、すっかり恒例となりました。楊逵先生の最もよき同志であり、葉陶を支え続けた妻の葉陶さんが、楊逵先生を尋ねてきた急な客人を、表に生えていた雑草でもてなしたという有名なエピソードにちなんだ、野生植物のアイデア料理大会などもあり、新化ならではの風物詩になりつつあります。

 

「楊逵文学記念館」の住所は、台南県新化鎮中正路488号です。アクセスは、在来線の台湾鉄道・台南駅から興南客運に乗り、「新化」停留所下車、乗車時間は約2030分です。台南駅の出口は二つありますが、「前駅」という方に出ます。新化停留所からは約300メートルほどです。

 

台南にいらっしゃいましたらぜひ、歴史を感じさせる新化のオールドタウンで台湾文学の息吹を感じ、そして周囲の美しい自然風景を楽しんで、都会とはひと味違うゆったりとした時を過ごしてみていただきたいと思います。

 

(担当:上野重樹)

 

1. 頼和記念館

 

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