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基隆陽明海洋文化芸術館

 
     

 

基隆陽明海洋文化芸術館

台湾全域には地方の文化を紹介する文化館が273ヶ所もあります。テーマは様々で展示品も多岐に渡っています。そこに秘められた文化の深さと精神的なパワーは、台湾本来の文化の美しさをさらに輝かせてくれます。

 

台湾の最北、そして雨の最も多い港町、基隆。この町の港にある現代的なガラスの壁、そしてレトロなアーチ型屋根の廊下を持つ建築物が目を引きます。1915年、日本統治時代に建てられ、今年で93歳となります。基隆の繁栄を目にし、第二次世界大戦での爆撃を経て復活したこの建物こそ、基隆陽明海洋文化芸術館です。

第二次世界大戦の戦火と時代の洗礼を受け、尖った塔の部分は失いましたが建物本体と外観は今も当初の状態を保っています。戦後、現在の陽明海運公司の前身で中華民国の最初の海運会社でもある招商局によって接収されました。そして1995年、ようやくこの建物は歴史と共に陽明海運公司による経営へと委ねられたのです。

この建物は日本郵船株式会社が建てました。当時の台湾総督府土木部の森山松之助技師と井出薫技師による設計です。建築様式は台湾における日本統治時代の初期のもので、鉄筋コンクリート造の「歴史洋式建築」です。使われた建材、外見のいずれもが総督府と似通ったところがあることから、台湾の建築の歴史において重要な意義を持ちます。基隆市政府は同市の十大建築の一つに選んでいます。

(陽明海洋文化芸術館の呉秋英・館長の話)

 

基隆陽明海洋文化芸術館

この建物は日本郵船株式会社の基隆での事務所でした。総督府の技師による設計だったため、当時の特色が多く見られます。現在の総統府にある特殊な窓は、ここにもありますし、特徴的なレンガも総統府と共通です。建材は日本から運ばれました。海運会社でしたからね。ここを修復した頃、総統府も修繕を進めていて、総統府からここのレンガを売ってくれと頼まれました。わたしたちも必要なので、わざわざ日本まで探しに行きましたが、ダメでした。ずっと以前のもので、メーカーも当時と同じ物は作れないのでしょう。

呉・館長は、陽明海洋文化芸術館が修復を始めた当時、出来る限り元の姿を保つことを原則にしたので、外を囲むような現代的なガラス・ウォールを作ったとしています。このため、ここは古典と現代の息吹を兼ね備える建物に生まれ変わりましたし、この建物の使命にも変化が現れたといいます。

(陽明海洋文化芸術館の呉秋英・館長の話)

出来るだけ似た建材を使って、元の姿を復元しようとしました。でも、日本統治時代、建築当初あった、尖った塔の形を再現することは出来ませんでした。第二次世界大戦での空襲で壊されたあと、国民政府がやってきましたが、経費が足らず修復できませんでした。そして陽明海洋文化芸術館が文化スペースとして生まれ変わる時になってようやく、いくらかの変化が施されました。正門にガラスのカバーをつけました。これには機能があります。文化スペースとなると、バリアフリーの空間としての規範が必要なので、ガラスのカバーのデザインを利用して、その中に障害者のためのエレベーターを設け、行動の不自由な人達が簡単に美術館内に入れるようにしたんです。こういった形式は古いものと新しい物が共存する構造の現れです。過去の歴史の元の姿を保つと同時に、新たな生命も与えたのです。

この建物は一生涯、海と共にあります。港で多くの船を見つめ、時代の移り変わりを感じてきました。つまりこの建物自体が、台湾の海運の歴史の縮図であり、海洋文化をPRする最適な場所なのです。このため、台湾の三大海運会社の一つ、陽明海運公司は陽明海運文化基金会を発足させてこの歴史ある建築物を基金会に寄付、陽明海洋文化芸術館として、台湾の歴史的建築物を守るため、台湾の海の美しさを伝えるのに余念がありません。

基隆陽明海洋文化芸術館

 

(陽明海運文化基金会の何樹生・董事長の話)

陽明グループは台湾で経営して35年です。台湾はとてもよい経営環境を与えてくれ、我々の業務は毎年成長しました。私たちは「永続的な経営をめざし、企業の責任を果たす」という理念に基づき、少しでも社会に還元して、貢献して、台湾の社会を平和で和やかな社会に生まれ変わらせたいと思っています。当基金会は4年前に出来ましたが、それ以来ずっと海洋文化と海洋教育を押し広めることを軸としています。台湾は一つの島であり、周りは海に囲まれています。ですから、我々の主軸は海洋教育と海洋文化の推進におくべきなのです。

基隆陽明海洋文化芸術館

今年4月末、「陽明海洋文化芸術館」では海洋夢想カーニバル大パレードを行いました。このイベントはすでに基隆市毎年恒例の活動となっています。様々な海の生物の形をした山車や仮装パレードの他、同市の各種学校の教員や生徒たち、それにコミュニティーの団体も参加しており、海洋文化館のここ数年における海洋文化PRの努力が市民に受け入れられていることが見て取れます。

(陽明海運文化基金会の何樹生・董事長の話)

このパレードの意義は、基隆港が台湾の頭だということにあります。港がこれだけ市内に深く入っている都市は台湾には基隆以外ありません。とてもきれいです。我々の文化館はそして、基隆港の前に建っている。ですから、いかにして海洋文化の普及を進めるかと考えて、基隆港の海底生物の姿を利用することにしました。魚、えび、貝、かに、とびうお、電気うなぎ、くらげなどです。ですから昨年、一回目として、2500人近くの子供でできた43の団体を登場させました。道に自動車が入って来れないよう封鎖すると、子供たちは道路上で遊び始めました。まるで竜宮城の王様が海底を休みにして、海の生物がみんな基隆の道路に上がってきて遊んでいるようで、大変好評でした。今年426日には海洋夢想カーニバル大パレードを行いましたが、昨年より増えて、63の団体が参加しましたよ。

陽明海洋文化芸術館では、この建物の紹介の他、海運に関連した航海の知識学習エリア、コンテナ運輸体験エリアなどもあります。ここで、あなたは海運の過程を一通り体験でき、船長の気分も味わえます。

(陽明海洋文化芸術館の呉秋英・館長の話)

常設展は二つに分かれていて、一つは陽明海運公司の世界各国へのコンテナ輸送の部分です。ここではコンテナ輸送の過程が紹介されています。一般の人が、一つのものがどうやって海の上を運ばれて向こうに届くのかを知る機会はあまりありません。ここではそれが体験できるようにしています。設備を操作できるところもあります。ミニチュアで体験することで、税関を出るところから目的地に着くまでが理解できます。もう一つの重要な部分は、貨物船の操縦をシミュレーションできる空間です。このスペースはすべて本物に照らし合わせて作られています。大人でも子供でも操縦室のすべてを知ることが出来ます。

陽明海洋文化芸術館にはもちろん、各種船舶の展示もあります。執行長の朱統平さんは、古今東西の各種材料と動力系統の船舶を紹介したと話しています。朱さんは、台湾の造船業は世界有数だが、冒険精神は明らかに不足しているとして、館内の展示とイベントを結びつけて、なんとかして台湾の人たちに海洋精神を発揮してもらおうと取り組んでいます。

(陽明海洋文化芸術館の朱統平・執行長の話)

海洋教育とは何か。海洋文化の精神とは何か。私たちはこれを考えています。海洋文化の精神は自由、開放、そして冒険だと思います。台湾では自由も開放もありますが、冒険度が足らない。造船では世界有数ですが、近海や海釣り、海洋レクリエーションの面で発展しているだろうか。発展しているとはいえません。海洋文化芸術館は何かその手助けが出来ないかと考えて、様々な試みを行っています。海に焦点を絞り、人々が海に対してもっと知ってくれるように、近づいてくれるように、守ってくれるように、利用してくれるように出来ないか。海洋文化とは、海洋文学、地理、景観、漁業、などなど大変深いものです。海と関係するものはすべて海洋文化と関連があります。これらを将来の展示の中で、一つずつ紹介していきたいですね。

陽明海洋文化芸術館におけるボランティアチームの隊長、張秋正さんは陽明海運公司で定年退職した元職員です。生まれも育ちも基隆で、子供のころから港で船の出入りを見てきました。様々な船舶の修理に携わりました。ボランティアとして、船のことになると語りつくせない物語を持っています。

(陽明海洋文化芸術館ボランティアチームの張秋正・隊長の話)

子供のころ、基隆は毎日雨が降る町だったんだ。基隆は雨の港。でも、僕みたいな基隆っ子は慣れちゃっていたけどね。基隆の港では大きな商船から小さな船まで見られた。僕はずっと基隆だから、家を出ると目の前が海だった。船が海の上を進んできれいだった。最初に触れたのは雑貨を載せる船だった。雑貨船はその後どんどん大きくなって専門的になったんだ。今は少なくて、コンテナ船やタンカーなんかになっちゃったけどね。台湾の造船業は以前はたいしたことなかったけど、ここ数十年で造船のスピードも品質も大変良くなった。子供のときは、道路では牛がひく車や大八車が通っていたけど、今は自動車ばかりで進歩したよね。

海洋文化芸術館の成功に自信を深めた陽明海運公司は南部台湾の港町、高雄の旗津に「陽明高雄海洋探索館」を作りました。地球温暖化で海の生態環境が危機に直面している折、ここでは海での環境保護をテーマにした展覧会を開いて、各方面から高く評価されました。

基隆陽明海洋文化芸術館

(陽明海洋文化芸術館ボランティアチームの張秋正・隊長の話)

僕たちが開く船の特別展示なんか、子供はもちろん、大人やお年寄りだって見たことが無いんですよ。私たち基隆の海洋文化芸術館のボランティア128人、それに解説員34人のわかりやすく、内容のある説明を通して、参観者の得るものは多いと思いますよ。最近紹介した液化石油ガスの船なども、みんな、どんな形をしているか知りません。ボールのようなタンクが船にたくさんついているんです。最近は二酸化炭素の削減が叫ばれていますけど、この、今話題の時事とも結び付けて展示できますよ。高雄には去年の年末、海洋探索館を作りましたけど、最初の展示は、「地球が無くなった」というタイトルの環境保護に関するものでした。北極の氷が溶けると、地球にどんな影響があるのか。海面の温度が一度上がったら、台湾はどうなるのか。こういったわかりやすい形で紹介したので、大人も子供も大変気に入ってくれましたよ。

陽明海洋文化芸術館の住所は、基隆市仁愛区港西街4号です。開館時間は毎週火曜日から日曜日で、午前9時から午後5時まで。月曜日は休館日で、旧正月とその前日もお休みです。入館料は一人、台湾元50元、65歳以上のお年よりは無料です。

長い歴史を持つ基隆港、かつて、台湾を世界の舞台に送り出し、台湾の誇るべき経済発展の基礎を作りました。100歳近くの歴史的建築物に設けられた陽明海洋文化芸術館は海洋文化、人文教育の種をまこうとしています。そして、台湾の人々が海を好きになり、海に近づき、海を守り、海を開発し、海と助け合っていくことで、台湾、この麗しの島の海洋文化が子々孫々、受け継がれていくことを願っているのです。

陽明海洋文化芸術館のHP  http://www.ocam.org.tw/

(担当:上野重樹)

 

 

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