頼清徳‧総統は5日、台湾北部‧台北市大安区に位置する、文化部(日本の文科省に類似)により「移行期正義の意義ある場所」に指定された民主化運動家・林義雄氏の旧邸宅「台湾基督長老教会義光教会」の新たな案内板の除幕式に出席しました。頼‧総統は挨拶の中で、域外の敵対勢力は台湾の歴史を歪曲し、敵味方の境界線を曖昧にしようと企てているほか、さまざまな手段で台湾に浸透し、内部の分裂を利用して対立と混乱を生み出し、台湾の人々の民主主義と自由への信念を弱めようとしている。しかし、こうした挑戦に直面しても、歴史の真相が明らかになればなるほど操作されにくくなり、共有する記憶が明確であればあるほど分断されにくくなると指摘しました。
文化部国家人権博物館は、1980年2月28日に台北市内で発生した「林一家殺害事件」の現場である現在の義光教会を、「移行期正義の意義ある場所」として指定し、案内板の除幕式を執り行いました。
頼‧総統は、これは民間からの自主申請を経て初めて審議・認定された「移行期正義の意義ある場所」であり、歴史的現場の保存にとどまらず、国家が歴史と勇敢に向き合い、痛みを記憶し、そこから民主主義を深化させる重要な節目であると述べました。
頼‧総統は、「林一家殺害事件」は権威主義体制下における人権侵害の中でも最も暗く、痛ましい1ページであると指摘し、自身が総統就任後に政治文書の公開を加速し、真相の追究を進めるよう指示したと述べました。また、今年(2026年)2月までに、国家安全局(国安局)はすでに14万件以上の政治文書を機密解除し、国家発展委員会檔案管理局に移管しており、その中には「林一家殺害事件」に関連する文書もすべて機密解除された。監察院の調査報告によれば、「林一家殺害事件」の目的は党外(国民党が台湾を統治していた時期に反国民党の立場を指す言葉)活動を阻止し、社会統制を強化することにあったとされ、さらに1980年の国家安全局の情報報告によると、当時すでに党外人士、台湾独立派、および国際関連組織などによる犯行の可能性は排除されていたと説明しました。
頼・総統は、これまでの調査・分析のいずれにおいても、権威主義統治下における国家機関の介入と真相の隠蔽が浮き彫りになっていると指摘。現在の民主政府は国家を代表して誠実に真相と向き合うだけでなく、移行期の正義を揺るぎなく推進していかなければならず、これこそが文化部に移行期の正義の意義ある歴史的な場所の保存に向けた審議手続きの開始を要請していく理由であるとしました。また、最近「林一家殺害事件」を題材にした映像作品が社会的な論争を呼んだことをきっかけに、多くの人が同事件に関心を持ち始め、自ら義光教会を訪れて「台湾」という名の歴史の授業を学び直していると指摘、この「台湾の歴史を再認識しようとする」動きに感動を覚えたと語りました。
頼・総統は、「ますます多くの人がこの『台湾』という名の歴史の授業を学び直す意思を持つようになればなるほど、私たちはより自信を持って、台湾の人々の物語、真実の物語を世界に伝えることができるようになると信じている。台湾の人々の物語は、勇気の物語である。『林一家殺害事件』の発生後も、残酷な脅迫と抑圧的な政治的雰囲気に直面しながらも、台湾の人々はひるむことなく、むしろ一層揺るぎない決意を持って台湾の民主化を推し進めた」と話しています。
頼・総統は、もし台湾の民主化運動が同事件により停滞していたならば、権威主義と専制政治の暗黒時代から抜け出すことはできなかったと強調。そして、勇敢な台湾の人々は、権威主義統治や域外の専制的勢力に対して決して屈服することなく、信念と不屈の精神によって台湾をアジアで最も自由な民主主義国家の一つへと導き、世界の繁栄と発展において不可欠な重要な役割を果たすまでに至ったと語りました。
頼・総統は、台湾はすでに権威主義体制から脱却したものの、域外の敵対勢力は依然として認知戦を通じて台湾の歴史を歪曲し、敵味方の境界線を曖昧にしようと企てているほか、さまざまな手段で台湾に浸透し、内部の分裂を利用して対立と混乱を生み出し、台湾の人々の民主主義と自由への信念を弱めようとしていると指摘。さらに、今になって再び、権威主義に妥協しさえすれば国防を強化する必要はないと主張する者や、台湾が国防力を向上させ、自衛能力を強化することを権威主義者に対する挑発とみなし、権威主義者と握手し交流し妥協すれば平和が得られるとさえ考えている者がいると述べました。
頼・総統は、歴史はすでに私たちに教えている。真の平和は権威主義に頭を下げたり妥協したりして得られるものでは決してない。こうした挑戦に直面する中で、最も有効な防衛は明確な歴史と共有する記憶であり、歴史の真相が明らかになればなるほど操作されにくくなり、共有する記憶が明確であればあるほど分断されにくくなると強調。そのため、文化部には引き続き民間と手を携え、権威主義時代に人権が侵害された歴史的現場を、移行期正義の意義ある場所としてより多く保存するよう要請した。また、講座や展示、映像を通じて公共的な対話を行い、市民教育の場とすることで、台湾の民主主義を守る力をさらに結集していく必要があると訴えました。
(編集:許芳瑋/豊田楓蓮/本村大資)