中国企業「中科天玑(GoLaxy、ゴラクシー)」から流出した内部文書によりますと、中国人民解放軍と中国で対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室(略称:国台弁)が調達した認知戦システムは、台湾の人々を4つのタイプに分類し、的を絞って攻撃するものであることが明らかになりました。
戦略リスク研究員の唐若凌氏は、このシステムはAI(人工知能)を用いて、高度に個人化され、真偽の見分けがつきにくい世論操作情報を生成する。そのため、専門家や学者、インフルエンサーが無意識のうちに引用してしまいやすく、一見すると参考に値するかのような言説へと姿を変えてしまうと警告しています。また、11月の統一地方選を控え、唐氏は、こうした手法がさらに巧妙化していくとの見方を示しました。市民が実際に実践できる対応策や、前期・中期・後期の3段階にわたる総合的な対処戦略についても提示しました。
中国が台湾人を4つのタイプに分類 Threadsが認知戦拡散の場に?
昨年(2025年)、中国におけるハイテク総合研究と自然科学の最高研究機関である中国科学院によって設立された「中科天玑(GoLaxy)」の内部資料が流出し、同社が開発し、売り込みを図っていた「中科天玑スマート宣伝システム GoPro」の存在が明らかになりました。
台湾のNPO「台湾民主実験室(Doublethink Lab)」は先ごろ、その流出文書を分析し、同社が全自動の認知戦システムの開発に注力していることを明らかにしていました。その中には、台湾人を4つのタイプに分類して狙い撃ちにする仕組みまで含まれており、大きな注目を集めました。とりわけ注目されるのは、人民解放軍や国務院台湾事務弁公室といった中国の政府機関が顧客に含まれており、これを用いて台湾に対し「スマート情報配信」や「選挙情勢分析」を行おうとしていた点です。
分析の結果、台湾人は「頑固なタイプ・友好的なタイプ・揺れ動くタイプ・客観的なタイプ」の4つのタイプに分類されていることが分かりました。また、このシステムはそれぞれのタイプおよびその対立構造に応じて、個別に最適化されたナラティブ(物語)を生成し、「分断」と「世論形成」という認知戦の効果を狙えるということです。
「台北で起きたネズミ騒動」を例に取ると、分析に参加した日本の東京大学および中国戦略リスク研究所の研究員である唐若凌氏は、取材に対し、このシステムは、SNSプラットフォームの「Threads」上で4つのタイプごとに1,000、合わせて4,000のアカウントを特定し、「極めて個人化されたカスタマイズコンテンツ」を通じて、攻撃や投稿の拡散支援を行う可能性があると説明しました。
唐氏は実際に「客観的なタイプ」を例に、「客観的なタイプというのは、記者や研究者、あるいは政治評論家などで、一見すると比較的中立的で、事実に基づいて自分の意見を述べるような人たちだ。そのため、中科天玑が採用している手法としては、ボットアカウントをユーザーに配信し、投稿の中に小さな情報を巧妙に紛れ込ませるというものが考えられる。例えば、一見すると客観的で説得力のある数字などだ。そして、もしそれがKOL(キーオピニオンリーダー)や記者によって引用された場合、そのボットアカウント自体も一緒に拡散されていくことになる。客観的なタイプの人々がその情報を再び発信することで、たとえ直接引用していなくても、記事執筆などの過程でその論点が使われれば、その(操作された)見解が非常に説得力のあるものとして広がっていく」と説明しました。
中国の情報戦を先読み 専門家が3段階の対策を提示
唐氏は中国への情報戦対策として、前期・中期・後期の3つの段階に分けた行動を提示しました。まず「前期」の段階では、大量の情報が一気に押し寄せる状況に対し、市民全体が世論動向の幅広い収集に協力し、疑わしい内容を見つけたら随時、記者やファクトチェック機関に報告することを勧めています。同時に、KOLもそこで検証に協力して影響力を発揮することで、ともに認知戦を食い止めることができるということです。
唐氏はさらに、「リスク・カレンダー」を作成すべきだと提案しています。たとえば、中華民国の双十国慶節(建国記念日、10月10日)や香港の主権移譲(返還)など、認知戦のリスクが高いと分かっている時期に向けて、前述の対応策をあらかじめ強化しておくと説明しました。
次に「中期」段階について、唐氏はKOL、メディア、ファクトチェック機関、シンクタンク、政府などを統合し、「戦略的コミュニケーション」の標準作業手順(SOP)を構築することを提案しました。例えば、48時間以内に各者が連携し、検証・発信・拡散などの作業を完了させる体制を整えるべきだとしています。
「後期」の段階について、唐氏は、台湾民主実験室、台湾情報環境研究センター(IORG)、デジタルリテラシー・ラボ「FactLink」といった機関が継続的に研究を行い、事後報告書を公表していくことが重要だと考えています。ナラティブの背後にある言説の中身や戦略を詳細に解き明かすことで、相手の手口をより体系的に理解し、対応策を立てる。そして最終的には、再び前期の「プリバンキング(prebunking)」の取り組み強化に立ち返り、社会の強靱性を継続的に高めていくと述べました。
(編集:許芳瑋/呂学臨/本村大資)