祖先が300年前に往来した航路を復活させようと、台湾の離島・蘭嶼とフィリピンのバタン諸島を結ぶ航海が15日に出航しました。600万台湾元(約2900万円)の費用と18か月の歳月をかけて建造された伝統的な「チヌリクラン」、『Ovayan(オヴァヤン)黄金友誼号』は、午前中に蘭嶼の龍門港を出発。黒潮に逆らい、台湾時間の16日午後にバタン諸島へ到着する予定です。
15日午前の出発の際には、多くのタオ族の人が港に集まり、航海の安全を祈るとともに、海を渡る60人の英雄たちにエールを送りました。
行政院原住民族委員会、財団法人原住民族文化事業基金会、および蘭嶼にある6つの集落のタオ族が手を携えて建造したこの20人乗りのチヌリクランは、今年(2026年)3月に完成し、4月28日にテスト航行を実施。6月9日には伝統的な進水・出航式が執り行われ、この日、蘭嶼からバタン諸島に向けて漕ぎ出しました。
原住民族文化事業基金会のMaraos(マラオス)理事長は、蘭嶼のタオ族とフィリピン・バタン諸島のイバタン人は同じルーツを持つ海洋民族であり、現在でも言葉の8割以上が通じ合うと説明。今回の初航海計画は同基金会が企画したもので、集落の職人が伝統技法を用い、釘を一本も使わずに27種類の木材を組み合わせてチヌリクランを作り上げたこと、また、星や波、トビウオの回遊ルートをもとに航海訓練を行ってきたことを明かしました。
今回の航海では、60人の乗組員が海上で交代しながら人力で船を漕ぎ、バシー海峡と黒潮を越える100海里以上の過酷な航路を経てバタン諸島を目指し、両地域の同じルーツを持つ絆を深めます。
原住民族文化事業基金会によりますと、今回の「蘭嶼-バタン300年初航海」計画は3年の準備期間を経て実現しました。航行に使用される「Ovayan(オヴァヤン)黄金友誼号」は、近代のタオ族の伝統的なチヌリクランとしては最大級のもので、全長約12メートル、20人が乗り込むことができます。「Ovayan」とはタオ族の言葉で「男性の金の胸飾り」を意味し、かつて蘭嶼とバタン諸島の間で行われた海上貿易によってもたらされた、重要な文化的記憶を象徴しているということです。
(編集:呂学臨/許芳瑋/本村大資)