台湾の国家通信社である、中央通信社が10日、日本から伝えたところによりますと、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典での座席の配置に不満を示し、式典への出席を拒否した台湾の在日本大使館に相当する、台北駐日経済文化代表処の李逸洋・駐日代表(駐日大使)は10日、再び自身のSNSに投稿し、今回の対応は、台湾の国家としての尊厳を損なう扱いに「戦略的な視点」から対処したものだと説明しました。台湾が外交使節団でない待遇を受け入れて出席すれば、「ドミノ効果」を引き起こし、中国が「長崎モデル」を日本のほかの地域にも広げる恐れがあると指摘しました。
李・代表はフェイスブックへの投稿で、9日、長崎の平和祈念式典への出席を拒否し、台湾の国家としての尊厳を守るとの報道資料を発表したところ、台湾と日本の市民の間で大きな反響があった。双方の主要メディアが大きく報じ、さまざまな議論を呼んだ。フェイスブックへのコメントやSNS上の反応を見ると、「8割以上が私の決定を支持している」。多くの人が台湾はその地位を貶められたり、抑圧されたりするべきではないと考えていると述べました。
李・代表は、各界からの支持と激励に感謝を示しました。一方で、今回の出来事は、台湾の政府が強調する「台日友好」が自らを欺く言葉にすぎないことを証明したものだと皮肉を述べ、今後は交流を強化するべきではないと主張する人もいると指摘しました。これについて李・代表は、「台日関係は史上最も良好だと述べたのは私だ」と強調し、自らが就任してからの2年間における台日関係の数々の進展を列挙しました。
李・代表は、高市早苗首相が「台湾有事は日本の存立危機事態になりうる」との考えを示したことを挙げ、「高市首相は台日関係を、唇と歯のように密接で、運命を共にする関係だと捉えている。これがすべてを物語っている」と述べました。また、去年のG7(主要7か国)外相会合では、日本側の強い主張により、共同声明から初めて「一つの中国」政策に関する記述が削除されたと指摘しました。さらに、世界各国の外交官のうち、台湾の在外公館の職員と最も多く交流しているのも日本の外交官だと述べました。
安全保障分野について李・代表は、日本の自衛隊の艦艇が去年初めて、そして今年も再び台湾海峡を通過した。その目的は、ほかの主要国の艦艇が台湾海峡を通過するのと同じく、「台湾海峡は国際水域であり、航行の自由が保障され、中国の内海では決してないと示すことにある」と説明しました。
経済・貿易分野については、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第2工場で採用する製造プロセスが、当初予定されていた6ナノから12ナノから、3ナノへと引き上げられ、投資額も120億米ドル(約1兆9100億円)から170億米ドル(約2兆7000億円)に拡大したと指摘しました。また、日本の半導体材料大手JSRが台湾中部・雲林県虎尾と北部・新竹県湖口に工場を建設し、TSMCに半導体材料を直接供給しているほか、TSMCがソニーと共同で九州に次世代センサーの合弁会社を設立すると述べました。さらに、台湾は日本にとって4番目に大きい貿易相手から、3番目に大きい貿易相手へと順位を上げたということです。
人的交流について李・代表は、台湾と日本を往来した観光客は去年、過去最多となる延べ824万人に達し、今年は延べ940万人を超えて、再び過去最多を更新する見通しだと述べました。また、東日本大震災や能登半島地震の際、台湾からの寄付金はいずれも世界で最も多かったことに触れ、令和8年熊本地震への寄付についても、「台湾が引き続き世界一になるだろう」との見方を示しました。
李・代表は、「ほかにも多くのことを挙げることができる。台湾と日本が兄弟のような深い友情で結ばれていることに疑いの余地はないが、台湾と日本の間に意見の相違がまったくないわけではないとも指摘しました。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会と、台湾の対日本窓口機関、台湾日本関係協会がそれぞれ相手側の市民を対象に実施した世論調査では、互いに好感を持つ人の割合は平均およそ77%となっており、双方に相手側へ好感を持たない人が一定数いるということです。
李・代表は、日本人の中に親中派がいる一方、台湾人の中にも反日派がいるが、「不思議なことではない」。台日関係が100点満点だと述べた人はこれまで誰もいない。長崎の出来事を過度に拡大解釈し、台日関係を全面的に否定する必要はない。「これは一つの個別の出来事にすぎない」と強調しました。
一方、抗議の姿勢を示すことで台日関係に不安材料をもたらすべきではないとの意見について、李・代表は、台日関係は一つ一つの努力を積み重ね、幾度もの試練を乗り越えることで築かれてきたものであり、「自然に良くなったわけでは決してない」と述べました。
李・代表は、自らの対応について、「台湾の国家としての尊厳が貶められた問題に、戦略的な視点から対処したものだ」と強調。長崎市が「自ら進んで、中国による台湾への法律戦に加担した」と批判しました。そして、台湾が言われるままに、屈辱に耐えて外交使節団として扱われないことを受け入れ、台湾には主権がなく、国家ではないと認めれば、その影響は一つの式典における座席配置の問題だけにとどまらない恐れがあると指摘しました。
李・代表はさらに、中国は必ず「長崎モデル」を広島にも押しつけるだろう。「長崎が台湾を否定しても台湾が受け入れるのであれば、なぜ広島は台湾を外交使節として扱う必要があるのか、と中国は主張するだろう」と指摘しました。台湾が何も言わずに受け入れれば、ドミノ効果が生じる恐れがあると懸念を示しました。「一度前例が作られれば、中国は日本の各地で、私たちが努力を重ねて築いてきた台日関係を一つ一つ壊していくだろう」と述べました。
李・代表は最後に、台日協力を支持するすべての人に対し、「私たちが共に立ち向かうべき相手は一つだけだということを、決して見誤らないでほしい」と呼びかけました。それは背後で操り、台日の友情を壊そうとする中国であるとし、「中国に台日の関係を引き裂く機会を決して与えてはならない」と強調しました。
李・代表はまた、広島県の横田美香知事との写真を投稿しました。横田知事は当日、各国の大使との面会が相次ぎ、次の予定までの時間も非常に限られていましたが、会場には台湾と日本の旗が掲げられていたということです。李・代表は、「このような誠意を目にしても、台日友好は単なる政治的なスローガンだと言えるのか」と問いかけました。
(編集:王淑卿/呂学臨/本村大資)