国立台湾大学医学部附属病院(台湾大学病院)の研究チームが推進する胃がん予防モデルは、疾患による脅威を低減させるだけでなく、高い経済的便益を示しています。台湾大学病院は18日に記者会見を開き研究成果を発表。過去20年以上にわたり構築してきたヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)のスクリーニングおよび除菌モデルに関する研究において、1単位のコストを投入するごとに約5倍の胃がん予防の費用対効果が得られることが示され、成果は今年(2026年)、アメリカ医師会(American Medical Association:AMA)が発行する臨床雑誌『米国医師会雑誌(JAMA)』に掲載されました。また、チームは20カ国の専門家と共に世界的なガイドラインを策定し、その成果も世界で最も長い歴史を誇り、世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つである『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に掲載されました。
台湾大学病院内科部の李宜家・副主任は、過去の研究でピロリ菌のスクリーニングと除菌が胃がん予防に役立つことは証明されていたが、チームは研究が国家政策へと進展するにあたり、国民の健康増進だけでなく、長期的な国家の医療費抑制につながるかについても深く理解したいと考えたと述べました。
研究チームは2004年、胃がんの発症率が高い離島の馬祖でピロリ菌のスクリーニングを開始し、その後、中部・彰化県、原住民族(先住民族)の居住地域である原住民郷、一般市民へと徐々に拡大し、20年以上にわたる実証データを蓄積してきました。既存の大腸がん便潜血検査を基礎とし、便中ピロリ菌抗原検査を加えることで「1回の検査で二重の防護」を実現。胃がんと大腸がんの2in1費用便益モデルを構築して長期的な経済効果を推計しました。その結果、初期段階でのスクリーニングや除菌治療費用が必要となるものの、将来的な胃がんの手術、化学療法、分子標的治療、免疫療法などの支出を削減できることが判明。費用と効果を金額に換算すると、1元(日本円約5円)を投入するごとに約5元(2日本円25円)を回収できる計算になるということです。
国立台湾大学公衆衛生学部の陳秀熙・教授は、この経済的便益は実際には依然として低く見積もられている可能性があると指摘。現在は主に医療コストを中心に計算されているが、がん罹患による生産性の損失や家族による介護など、有給・無給のコストを含めれば、社会全体の経済的便益はさらに高くなると説明。少子高齢化に直面する中、同氏はがんスクリーニングを単なる医療支出として捉えるのではなく、「国家の健康投資」として評価すべきだと主張しました。
この高い経済的便益を持つモデルは、現在では研究から全国的な政策へと発展しています。李宜家・副主任によりますと、ピロリ菌スクリーニングは今年から国家政策となっており、当初は初年度60万人のスクリーニングを見込んでいましたが、7月末時点で既に60万人を超えています。スクリーニングへの投資を増やすことで、将来の化学療法、分子標的治療、免疫療法などの支出を減らすと同時に、より高い生活の質を維持できる見込みです。
台湾大学病院の余忠仁・院長は、今回の成果の重要な意義は、長期的な臨床および公衆衛生研究が真に政策へと転換され、国家に採用されただけでなく、世界的なガイドラインの形成にも寄与した点にあると述べました。
李・副主任は、今回の国際ガイドラインには9つの章があり、台湾チームはそのうち組織的スクリーニング、抗生物質と薬剤耐性管理、費用対効果、実際の予防効果など5つの章の策定に参加したと指摘。20年以上にわたり台湾が蓄積してきた経験が反映されていると述べました。チームは20カ国35人の専門家とともにグローバルな胃がん予防指針を策定し、成果は今年3月にNEJMへ掲載されました。離島や地方での実証から全国政策へと至った台湾の予防経験は、諸外国が胃がん予防を推進する上での重要な参考となっています。
(編集:呂学臨/中野理絵/本村大資)