今回は、台湾と日本の子供達の「将来の夢」に関する話題です。
子供が憧れをもち「なりたい」と思う職業は、国が違うと違いが生まれてきます。それは国ごとの経済状況や社会環境を反映しているからです。
まずは日本の子供に関するデータがあるのでご紹介します。先日、日本の調査・研究機関「学研教育総合研究所」が行った調査によりますと、今年、日本の小学生が「将来なりたいと思っている職業」の1位が「ネット配信者」であることが判明しました。「ネット配信者」は昨年はパティシエに次ぐ2位でしたが、You Tubeをはじめとする動画配信サイトの人気がうかがえ、発信力や創造性、自由な自己表現を重視する“クリエイター経済”の魅力が、小学生の間で際立っていることがうかがえる結果となりました。そして2位は昨年首位だった「パティシエ」、3位以降は「警察官」「学校の教員」「医師」といった、生活に身近な職業が名を連ねました。しかし、中学生・高校生になると状況は一変。安定志向が強まり、「将来なりたいと思っている職業」として今年は中学生、高校生ともに1位「会社員」、2位「公務員」、3位「学校の教員」でした。
中学生の場合、4位にエンジニアやプログラマー、ネット配信者が同率で並び近年人気の専門職がランクイン。また、高校生の場合、4位は看護師、5位はエンジニアやプログラマーでした。今年は中高生の間でエンジニアやプログラマーといった職業の人気がそこまで高くなく落ち着いているのが特徴的で、なりたい職業が多岐にわたっており、現代の職業の多様化が影響していることがうかがえます。
では一方で台湾の方はどうかと言いますと、台湾の日刊新聞の一つ「国語日報」が行った最新の調査により、小学生が最もなりたい職業の上位2位は「プロスポーツ選手」と「eスポーツ選手」であると判明しました。こちらはいずれも前回と同じ結果です。これはパリ五輪や野球の国際大会の影響もあり、小学生の人気職業は前回と同様にスポーツ関連が上位を占めたということです。
日本の小学生の場合、「ネット配信者」と「パティシエ」がそれぞれ1位、2位でした。
台湾の中学生はというと、最も人気の職業は「画家(イラストレーター、漫画家、CGアニメーターなど)」で、創造性への関心は高いものの、2位は「半導体プロセスエンジニア」で、「高収入」である半導体分野の人気から現実志向も強い傾向がうかがえます。台湾の中学生からの人気が1位である画家について、アニメやゲームに親しむ日常と密接に関係していると分析されており、子供たちは作品を楽しむ中でその魅力的な表現に触れ、自らも同様の分野で働きたいと考えるようになる傾向にあるといいます。
そして3位には、「心理カウンセラー」や「医師」、「コンピューターエンジニア」、「eスポーツ選手」、「パン・菓子職人」が同率で並びました。AIの普及や台湾積体電路製造(TSMC)の影響を受け、2位の「半導体プロセスエンジニア」は、中学生から人気のない職業8位から一転してなりたい職業2位に急上昇したほか、「コンピューターエンジニア」は前回の調査で圏外だったものの今回は3位に入るなど、「収入の高さ」を理由に大きな変化が見られました。ちなみに日本の中学生の場合は1位「会社員」、2位「公務員」、3位「学校の教員」でした。
台湾の中学生の間で、「心理カウンセラー」が5年連続でトップ10入りし、順位も年々上昇しており、今年は3位に。心理カウンセラーの順位が上昇している点について、現在の学生の間で自身のメンタルヘルスへの関心が高まっていることに加え、台湾の高校では、2024年から、台湾の公務員は2025年から、医師の診断書を必要とせず精神の不安を理由に休暇を決められた日数内申請できる「メンタルヘルス休暇」制度を取り入れており、中学生のうちから「心理カウンセラー」の重要性に気づくようになっていると指摘されています。
一方で台湾の中学生にとって「医師」がなりたい職業3位であったことに関しては、医療トラブルが増えていることも影響し、医師が以前のような憧れの職業ではなくなりつつあると見られています。
台湾と日本の子供の職業選択の背景には、共通していずれも「先行きが見えにくい時代において、何が最も安全か」という問いに向き合った結果がみえてきます。台湾における半導体分野の人気は、高収入や社会的評価、産業の将来性といった具体的な要因に支えられています。一方、日本では将来性のある職業像が見えにくい中で、「会社員」が安全な選択肢として選ばれています。いずれも不確実な環境の中での合理的かつ保守的な判断といえるでしょう。
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ちなみに、子供たちの「幸福度」に関して最近新たにこんな発見がありました。
台湾の国立台湾師範大学が行った最新の児童幸福度調査によると、子どもの幸福度に大きく影響を与える要因は「家庭の収入」や「親の学歴」よりも、親子関係、人間関係、運動習慣、生活での経験などであることが明らかになったのです。一般的に「子供は裕福なほど幸せ」と思われがちですが、この認識を覆す結果です。
特に子供の幸福度に大きな影響を与える要因は「親の感情」であり、親が幸福であれば子どもの幸福度も高まり、逆に親が長期間にわたりうつ状態にある場合、子どもの幸福度は低下する傾向が確認されました。こうした影響は幼児期から小学校の段階まで継続しているということです。また、日常的な親子の関わりも重要で、食事を共にしたり会話をしたりすること、遊びに付き添うこと、公園や図書館などに出かけることが、いずれも幸福度の向上と関連しており、「必ずしも高額な出費は必要なく、日常の関わりそのものが鍵だ」ということです。
今回の調査は、台湾の3歳児からの長期追跡調査によるもので、これまで約2500人のデータを蓄積し調査を行い判明した結果です。