4月15日(水)の「こんにちは台湾」。
今週の「こんにちは台湾」は15日(水)、17日(金)の2回に分け、日本の元自衛隊トップの方のインタビューをお届けします。
水曜日は日本の元陸上幕僚長、岩田清文さん。金曜日は日本の元海上幕僚長、武居智久さんです。
お二人は4月11日(土)に北部・台北市内で行われた「民主の盾:第一列島線における全社会レジリエンス協力国際フォーラム」に出席されました。
このフォーラムは、台湾の医師を中心に作られた非営利団体、「福和会」が主催したもので、テーマにあるように第一列島線周辺の民主パートナー国、台湾、アメリカ、日本、フィリピン、韓国から専門家を招き、「第一列島線周辺での有事が発生における、パートナー国およびアメリカの協力」などに焦点をあてた話し合いが行われました。
当日は台湾の外務大臣にあたる林佳龍‧外交部長や元アメリカインド太平洋陸軍司令官、チャールズ・フリンさん、元アメリカ海軍第7艦隊司令官、マーク・モンゴメリさん、日本の元統合幕僚長、岩崎茂さん、元陸上幕僚長の岩田清文さん、海上幕僚長、武居智久さん、元ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部大使の高見沢将林さん、フィリピンからは元陸軍副司令官のレオデヴィック・ギニッドさん、韓国の元韓米聯合司令部副司令官の任浩永さんなど、錚々たる方々が出席。
そのフォーラム会場で、日本の元自衛隊最高幹部である岩田さん、武居さんに取材させていただくことができました。
台湾有事を念頭にした、第一列島線周辺の民主パートナーの協力などについて、お話を伺いましたので、どうぞお聴き逃しなく!!
「第一列島線」有事への備え、緊密な多国間連携が鍵:元陸上幕僚長・岩田清文氏に聞く

ー 最近の第一列島線を取り巻く状況について:
岩田氏は、中国が習近平・国家主席の指導下で2027年を一つの節目として海洋進出を加速させている。さらに、ウクライナ戦争を経て、中国、ロシア、北朝鮮、イランの4カ国が連携を強めていることが明らかになったと指摘。その上で、台湾有事の際は中国のみならず、北朝鮮やロシアの脅威も同時に高まることから、日本の北海道からフィリピンに至る、「第一列島線全体を守る体制」を構築しなければ、抑止は成り立たないとの認識を示した。
ー 第一列島線有事の市民生活への影響は:
台湾有事という視点で見れば、おそらく南シナ海はバシー海峡、あるいは台湾海峡で封鎖され、今回のイラン戦争におけるホルムズ海峡のように南シナ海のシーレーンが脅かされる。そうなった場合、石油やLNG(液化天然ガス)、プラスチックの原料となるナフサなどが入ってこなくなり、日本の日常生活が直接的な脅威にさらされる。加えて、事態がエスカレートすれば、尖閣諸島や南西諸島への直接的な影響がある。場合によっては、中国のロケット部隊による日本の政治経済の中枢、備蓄基地、空港・港湾へのミサイル攻撃やテロ攻撃の可能性も予測しておく必要があると考えている。
ー 現状での日本の備えは:反撃能力の整備とウクライナの教訓
日本列島が危機になった場合の備えに関しては、2022年に策定された安全保障戦略に基づき、防衛力の強化が進んでいる。特に重要なのは、相手に攻撃を思いとどまらせるための「反撃能力」の整備だ。今年は熊本に射程1000キロ以上のスタンド・オフ・ミサイルが配備されたほか、自衛隊が持つような装備品というものを、ウクライナ戦争の教訓を得ながら増やしてきている。また、ウクライナ戦争の教訓から、宇宙・サイバー・ドローンといった新領域における総合的な防衛体制の準備も行われている。
ー 安全保障の分野におけるドローンの役割とは:
戦略的な意味でのドローンは大きく二分することができる。一つは、数千キロという長距離を飛び、相手の都市やインフラを狙う「長距離・大型ドローン」。もう一つは、距離にして数十キロの範囲内で戦車や兵士を目標とする「小型ドローン(FPVドローン)」がある。現在の戦いはドローンが主流になってきており、ドローン撃退するための「対ドローン用ドローン」の開発が焦点となっている。さらに、ウクライナ戦争を見ると、現在は数ヶ月単位で戦法や兵器が目まぐるしく進化する状況になっている。
ー ドローンのサプライチェーン:台湾の半導体と同志国のネットワーク
ドローンのサプライチェーンを考えた場合、一国ですべてを完結させることは困難であり、「同志国間での補完」が大前提だ。台湾の場合は特に、ドローンの「頭脳」である半導体に強みを持つ。そしてモーターや翼などについては、他の国と連携することによって増産が可能となるだろう。日本もこれからドローンの量産に踏み切る方針だが、これも日本単独ではなく、台湾や同盟国との連携によるネットワーク型の生産体制を構築することが、結果として抑止力につながると考えている。
ー 第一列島線における民主パートナーの役割は:5か国のネットワーク構築で「拒否力」向上を
台湾有事の最も重要な焦点となる台湾。第一列島線の北側で連携をする日本、南側で連携するフィリピン、そしてそれを全体的に助けるアメリカ。加えて第一列島線上にはないが、韓国は有事の際に北朝鮮を抑え、状況によってはサプライチェーンとしての様々な部分で各国を支援するという観点において非常に大事だ。
日本の役割で言えば、第一列島線上の自国を守るというのはもちろんであり、台湾のすぐ近くの与那国島、あるいは尖閣諸島も含めて南西諸島をどう守るかということと同時に、台湾を助けようとするアメリカの来援をサポートし、そして日本のアメリカ支援によってアメリカが台湾で有利な戦いをするという役割もある。加えて、日本は北朝鮮からのミサイル攻撃やロシアの動きも抑止する必要があるなど、さまざまな役割を持っている。
重要なのは台湾、日本、アメリカ、フィリピン、韓国5か国のネットワークによる「拒否力」を高めることで、中国が台湾に手出ししづらくなる。こういった構図にすることだと考えている。
ー 高市政権下での国家安全保障戦略の継続と進化:
2022年に岸田政権が策定した安全保障戦略、防衛戦略、防衛力整備計画と三つの戦略文書は、高市政権発足後も大きな流れは変わっていない。
高市総理が12月にこの戦略を変えるというのは、ウクライナ戦争を通じて四つの国が連携していることや、さらに宇宙からサイバー、ドローンなど、戦い方がどんどんどんどん変わっていくことへの対応。もうひとつは、中国とアメリカの戦力のバランスが過去とは違い、ある意味アメリカだけでは抑えられなくなっている。こういった変化に対応するために戦略を見直そうということだ。この部分において、日本としての防衛力が強化されることが、戦争を抑止するということにつながると考えている。
ー トランプ政権の対台湾支援、5か国ネットワークへの関わり:
アメリカが去年12月に公表した国家安全保障戦略を見ると、いわゆるドンロー主義と言われる内向きな政策に変化しつつあると感じている。アメリカの内向きな姿勢というものが不安になるところだが、一方で世界の富、GDPの50%以上はアジアにある。だからアジアはしっかり重視したいというのが、トランプ大統領を含めた戦略の考え方だと思う。したがって日本も、台湾も含め、アメリカをこの地域から離れないように。いざというときは、しっかりと支援するような形で連携を進めていかなければ、非常に危ない。現在はそういう転換期にあると言える。
ー 有事における在留邦人保護と課題:
台湾に住む約2万人の日本人の保護については、極めて機微な問題ではあるが、避難のタイミングが重要だと思っている。政府が公式に避難を呼びかけることは、中国側に「宣戦布告」と捉えられかねないリスクを孕んでいるため、事態が緊迫する前に、まずは民間の経営判断によって家族や従業員を早期に帰国させるなどの処置が重要だ。その上で政府が他国と連携して安全な避難体制を整えるべきだろう。
ー インド太平洋地域の安定に重要なポイント:5か国の連携を北京に示すことが最大の抑止力に
インド太平洋地域の安定に向けた重要ポイントは、第一列島線上に位置する国々とアメリカが同じくして、この地域を守る準備をすることだ。今回のフォーラムを通じて、5か国の専門家が共通の認識を持てたことは大きな成果であり、この地域一帯が「一つの戦域」であるという認識で、5か国の緊密に連携している事実を北京に明確に示すことこそが、最大の抑止力になると考えている。

元海上幕僚長、武居智久さんのインタビューは4/17の番組ページでお聴きになれます。以下リンクからどうぞ!