今回は「台湾産のウナギ」について取り上げていきます。
あと少しで本格的な暑い夏がやってきますが、栄養価が高く、夏バテや食欲減退の防止が期待できるウナギ、みなさんはお好きですか?ウナギには疲労回復に役立つビタミンB群や、良質なタンパク質、亜鉛、カルシウム、脂質の部分にはDHA、EPAも豊富に含まれていて、体の表面のぬるぬるした部分にはムチンという胃腸の粘膜を保護する成分が含まれていることから、どこを取っても「優れた健康食」と言えます。高価でなかなか気軽には手が出せないものの、これからの季節だからこそ是非取り入れたい食材です。
古来から私たち日本人が口にしているウナギは日本、中国、台湾、韓国など東アジアに広く分布する「日本ウナギ」と呼ばれる種類のもので、一般的に身が締まっていて味が濃厚という特徴があります。日本で養殖されている国産ウナギは全て日本ウナギで、フィリピン沖で孵化し、海流に乗って日本の河口に流れ着いた稚魚から育てられたものです。そして、台湾で養殖されているものもまた、そのほぼ全てが日本ウナギです。つまり、台湾産ウナギを購入しても日本人にとって親しみのある同じ味が楽しめるというわけです。
実は、台湾におけるウナギ養殖の歴史は意外に古く、50年以上も前の1970年代初期に遡ることができます。その養殖技術は日本から伝えられ当時はまだ数の少なかった養殖業者が中部・彰化や南部・屏東で淡水での養殖を試み、同時に日本への輸出を開始しました。その技術を進化させつつ現在まで受け継がれています。そもそも、温暖な気候と黒潮の影響で水温の高い豊かな地下水に恵まれた台湾南部はうなぎの養植に最適な環境で、土壌、水質なども徹底的にうなぎの健康面に配慮され、より自然に近い環境下で養殖が行われています。広大な養殖用の池でのびのびと育てられたためストレスが少なく、うなぎ自体の免疫力が高まっているぶん病気にもなりにくいといいます。うなぎ1匹あたりの面積を日本での養殖面積と比較すると、台湾はなんと10倍以上。そこで、時間をかけてゆっくりと育てられます。日本での育成期間が約6ヶ月間なのに対し、台湾では約2年。これが台湾産ウナギの美味しさにも反映されているのです。
農業部水産試験所の統計によると、台湾のウナギ養殖産業は1990年代初頭に黄金期を迎え年間生産量が5万トンを超え、その95%以上を日本へ輸出、日本市場でのシェアは50%を超えていました。しかし中国のウナギ養殖産業が企業化・大規模化によって急成長した結果、現在では中国産が日本市場の64%のシェアを占めるまでに。一方、台湾産の年間生産量はここ数年で1万トン未満に落ち込み、日本でのシェアも2〜3%に低下しています。また、台湾のウナギ養殖面積も年々縮小しており、最盛期には3000ヘクタールを超えていたものの、農業部漁業署の統計では、現在は200ヘクタール未満にまで減少しています。
農業部漁業署の王茂城・署長は、日本向け輸出の減少を受け、欧米や中東市場への販路開拓を支援すると同時に、台湾国内の市場開拓にも積極的に取り組んでいると説明しています。
一方で、19年もの間ウナギについて研究してきた台湾のある専門家は、台湾において天然ウナギの個体数も減少していると指摘しています。その主な原因として、河川・河口域の環境悪化が進み、生息地の7〜8割が失われたほか、過剰な漁獲の深刻化を挙げています。近年は、沿岸からの手網漁だけでなく、ウナギ専用漁船による大規模漁獲が増加し、台湾東部沖では100隻を超える漁船が操業する光景も見られると明かしています。
気候変動が影響しているかについては、ウナギが4〜30度まで適応できることから、個体数減少への影響は生息地破壊による減少ほど大きくないとの見方を示しています。
台湾では例年、ウナギの来遊シーズンは10月から翌年4月末までとされていて、農業部漁業署は、漁師の生計と資源保護の両立を考慮し、2013年に「ウナギの漁獲時期を規制する制度」を導入。東部・花蓮県と南東部・台東県を除き、毎年3月1日から10月31日まで、沿岸3海里以内や河口域などでの漁獲を禁止しています。加えて7つの県と市では、体長8センチ以上のウナギを捕獲することを禁止しており、将来的には台湾全土の河川への拡大も検討されています。
この専門家はさらに、ウナギは元々人為的な漁獲がなかったとしても、卵から大人に成長できる数はとても少ないと指摘しています。人為的な漁獲がない自然環境下では、1匹のメスは約100万個の卵を産むものの、卵から孵化した稚魚の多くが海流に乗って河口へ向かう過程で天敵に捕食されることから、河口へ到達する前に大量の稚魚が命を落とすといいます。さらに、ようやく河口にたどり着いても、今度は肉食動物の餌となり、生き残れるのはごくわずかしかいません。その中で生き延びた個体だけが河川での成長を続けられ、河川に入ったあと、少なくとも4年以上、長い場合は10年以上をかけて大人のウナギへとなり、再び海へ戻って生まれた海域で産卵。「人為的影響が全くない場合でも、100万個の卵から最終的に産卵場へ戻れるウナギはわずか2匹程度だ」と説明しています。この専門家によると、台湾では日本ウナギが産卵できるまでに河川で4〜8年成長する必要があるものの、現在は個体数があまりにも少なく、年間どれだけの大人のウナギが産卵の為に海へ戻っているのか正確な推計すら難しいと指摘しています。
台湾がウナギ資源の保護において実効性のある管理制度を徹底するとともに、日本向けの輸出量が回復することで、今後も美味しい台湾産ウナギが国内や日本で食べられることを願いたいです。

台湾産ウナギを使った様々な料理(写真:CNA)