今日ご紹介するキーワードは「好兄弟」。
これは、直訳すると「良い兄弟」ですが、一般的な日常会話では「親しい友人」や「大親友」という意味で使われる言葉です。
でも、台湾では特に今の時期、違う意味で使われるんですよ。
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今年もこの季節がやってきました。今日8月13日は、旧暦の7月1日にあたります。そう、今日、この世とあの世をつなぐ「鬼門」が開き、台湾のお盆月「鬼月」に入りました。
民間行事は旧暦で行われる台湾では、「鬼月」には、あの世からご先祖様の霊や多くの「無縁仏」達がこの世にやってきます。
この「無縁仏」のことを、今日のキーワード「好兄弟」と言うんです。実はこれは台湾独自の使われ方なんです。
ではなぜ、普段「大親友」を意味する言葉で呼ぶようになったのかというと、ここには台湾の人たちの「幽霊に対する優しい気遣い」と、「ちょっぴり恐れる本音」が隠されているんです。
台湾では、あの世から戻ってきた幽霊たちを直接「鬼」と呼ぶのはタブーとされています。直接と呼ぶと幽霊を怒らせてしまい、災いを引き寄せてしまうと信じられているからです。
そのため、「鬼月」に入ると、「鬼」という単語さえも口にすることを嫌がる人も多くいます。
そこで、直接呼ぶことを避け、「あの方たち」というような親しみを込めた呼び方をするようになりました。
そしてもう一つ深い理由があります。
台湾には昔、中国大陸から多くの開拓者が海を渡ってやってきましたが、かつては「台湾へ行く十人のうち、三人は残り、六人は死に、一人は引き返す」と言われていたそうで、まだ船のナビゲーションも、天気予報もない中で海を渡っていたため多くの船が「黒水溝」と呼ばれる台湾海峡の難所で転覆してしまっていました。しかも、無事に台湾に到着しても、天災や疫病などに加え、「三年に一度の小乱、五年に一度の大乱」と言われるほどに、民衆の反乱や、民族間の抗争があったことから、身寄りのないまま亡くなった人がたくさんいました。
そんな彼らの霊を「怖いお化け」として排除するのではなく、「現世には身寄りはないけれど、みんな兄弟じゃないか。この鬼月の1か月間は美味しいものを食べて、ゆっくり楽しんでいってほしい」と考えました。
この台湾ならではの“おもてなしの心”から、無縁仏たちのことを「好兄弟」と呼ぶようになり、それが定着したんだそうです。
そのため、この「鬼門開(鬼門が開く日)」のお供え物には、たくさんの食べ物や飲み物を準備します。さらに、普段の“拜拜(お祈り)”の時には見かけない、洗面器やバケツ、タオル、歯ブラシ、歯磨き粉、石鹸、鏡といった「日用品」などを一緒に準備します。
これはなぜかと言うと、長旅をしてきた「好兄弟」たちがちょっと休憩して、身なりを整え、気持ちよく過ごしてもらうための準備をしてあげることが重要なんです。
そして最後には、あの世で使うお金の代りのものとして、「紙錢」を燃やして持たせてあげます。
こうやってもてなすことで、「好兄弟」も満足し、今、生きている私たちも幸福を得ることができると考えられています。
ちなみに、「鬼月」には数々のタブーがあるんですが、代表的なものを紹介すると…
●夜、外に服を干してはならない
服は人の形をしていること、そして濡れた洗濯物には霊が取りつきやすいとされていることから、夜、外に服を干さないようにと言われています。
●後ろから肩をたたいたり、呼びかけてはならない
人の肩には“陽”の気を表す炎が宿っていると考えられていて、振り返った拍子にそれが消えてしまうと体調を崩してしまうと言われています。
●室内で傘を差してはいけない
もし室内で傘を差すと、“好兄弟”が傘に入ってきやすくなるそうです。
これらのタブーをうっかり犯してしまうと、周りの台湾人から「今は鬼月だからやってはダメよ!」と言われたりすることもあるので、皆さんも気を付けてくださいね。
最近では、こうしたタブーをあまり気にしないという人も増えていますが、「好兄弟」を温かく迎えるという考え方は、今も台湾に受け継がれています。