今回は、台湾北部・台北市や新北市を走る新交通システム「台北メトロ(MRT)」のうち、「淡水信義線(通称「レッドライン」)」とも呼ばれている路線についての新たな情報をお伝えします。
現在の淡水信義線は、一つ目の駅・台北101の近くにある象山駅を出発し、中華民国の初代総統・蒋介石を記念して建てられた中正紀念堂前に位置する中正紀念堂駅や、台湾最大の駅・台北駅、そして私達の台湾国際放送の最寄駅・圓山駅などを経由し北へ向かい、新北市の淡水駅を終点とする路線です。台北市内の主要な観光スポットを多く結んでおり、観光客にとっても利用頻度の高い路線として、毎日多くの人々が利用しています。台北駅にも乗り入れていますので、リスナーの皆さんの中にも、利用されたことのある方、いらっしゃるかと思います。
なぜ淡水信義線をご紹介したかというと、実は来年始めに延伸区間が開業する予定なんです!その区間は、象山駅から伸びる「信義路六段」を東に全長およそ1.4キロメートル延伸するもので、象山駅に変わり「広慈/奉天宮駅(こうじ/ほうてんきゅうえき)」が新たな一つ目の駅となります。
駅名の由来についてですが、「広慈」はかつて老人ホーム、児童養護施設、障がい児の養育施設などを備えていた「台北市立救済院」という社会福祉施設を前身とし、1974年から「広慈博愛院」と呼ばれていた場所にちなみます。「広慈博愛院」は当時としては、台北市最大規模の福祉園区でした。しかし都市開発に伴う再編計画により、広慈博愛院は段階的に業務を終了し、建物も取り壊され、2008年末、全施設が完全に閉鎖、すべての入所者の移転が完了し、現在は跡地に「広慈博愛園区」という住宅地が広がっています。このエリアにできる駅だから、名前に「広慈」が付く訳です。
一方、名前の後半部分の「奉天宮」は駅周辺に位置し、台湾北部で最大の天公廟「松山奉天宮」に由来します。天公廟とは、道教において万物を司り高い位に立つとされる神様「玉皇上帝」を祀る廟です。
ちなみに、駅名にスラッシュが入る駅は台北メトロの駅としては、同じく淡水信義線の「台北101/世界貿易センター駅」に次ぎ2つ目です。
今回の延伸工事は2016年10月に着工し、今年6月末時点の工事全体の進捗率は85%まで進んでいるのですが、実は『メトロ史上最も困難な工事』と言われていました。その理由は、延伸区間の浅い部分の地層は軟弱である一方、深い部分はおよそ2000万年前に形成された硬い地盤という複雑な地質条件だったから。この硬い地盤は通常の建築用コンクリートの4倍の強度を持ち、最大で厚さ20メートル以上に及んだそう。
しかし5年間にわたる工事の末、駅舎の建設およびトンネルの主要構造はすでに無事に完成しており、その後の駅構内や軌道エリアにおける電気・空調・消防システムの設置と試験も順調に完了、現在は最終工程である車両の自動運転システムを含む走行試験および既存の淡水信義線との接続試験に入った段階です。
この試運転は、先月7月23日に初めて行われ、車両が初めて象山駅から広慈/奉天宮駅へと無事に走行、正式な開業が一歩近づいたことを象徴する出来事となりました。ただ通常の運行時間や夜の点検作業に影響しないよう、すべての作業は午前2時から5時の間の3時間ほどで行う必要があります。また、走行試験終了後には直ちにシステムを元通りに戻し、通常運行に支障が出ないよう確保する必要もあり、この工程には大きなプレッシャーがかかっているといいます。
台北メトロの計画および建設を担う機関である「台北市メトロ局」によると、この最終工程は今後5カ月前後を予定しており、今後もさらなる走行試験の時間確保に努めながら、今年末に全面完成を、そして来年の第1四半期にも運行を開始することを目標としています。
台北101より東エリアの新たな区間開通により、台北市東部の交通利便性が向上するだけでなく、交通渋滞の緩和にも繋がることが期待されています。
駅や軌道の工事の様子、そして試運転の様子は「台北市メトロ局」や台湾の各メディアが映像で紹介しています。実際にどのように行われたのか更に詳しく知りたい方は、「信義線東延段」と検索したら出てきますので、チェックしてみて下さいね!
ちなみに、広慈/奉天宮駅には二つの出入り口が設けられる予定で、そのうちの一つは名前の由来にもなった広慈博愛園区にある複合型ビルの中にできるそう。そして広慈博愛園区内には「広慈公園」というおよそ4000坪の広さを誇り台北101を眺められる大きな公園があります。また、夜景スポットとして人気があるほか、春の終わりから初夏にかけてホタルを見ることもできるハイキングコース「虎山登山道」の入り口にも駅から歩いて行けるようになり、台北市内にいながらも今までは行きにくかったスポットへ簡単に行けるようになりそうです。
早くて来年の第一四半期に開通ということなので、皆さん、次台湾に来る際は、まず桃園空港から桃園メトロ空港線で台北駅まで来て、そのまま淡水信義線に乗り、新しい区間を試してみてはいかがでしょうか?台北市の新たな魅力を発見できるかもしれませんよ。
私も開通が今から楽しみです!