今回は二つの話題についてご紹介します。
一つ目は、台湾の医療制度が今月8月より新しくなり、これから説明する幾つかのケースに当てはまる場合、自費ではなく保険を使った治療が適用されるようになります。
まず一つ目のケースについて。
台湾ではこれまで、肺炎や尿路感染、皮膚・軟部(なんぶ)組織感染症などにかかっている多くの患者に関し、抗生物質を口から投与できなく点滴を必要とする場合、1日入院しなければなりませんでした。
今年に入り、台湾の救急外来はかつてない混雑状況を記録、その一因として入院ベッドの不足が指摘されていました。
こうした状況を受け、8月から、全民健康保険制度の加入者は、入院せずとも外来診療で抗生物質の点滴治療が可能になりました。全民健康保険とは日本の国民皆保険制度に当たり、台湾に戸籍がある無いに関わらず台湾に暮らす人に対し加入を義務付けている保険制度です。
この制度で抗生物質の点滴が入院いらずで出来るようになった事で、病院のベッドを重症患者に優先的に提供できるようになるほか、患者側の入院費軽減や医療現場の負担軽減にもつながることが期待されています。
衛生福利部(日本の厚労省に類似)中央健康保険署は、この制度に約1億元(約5億円)の予算が投入され、年間およそ2万人以上の患者が恩恵を受けると見込んでいます。
全民健康保険の対象となった二つ目のケースについて。
8月から、複数の新たながん治療薬に関し、全民健康保険を使った支給を受けられるようになります。政府も薬剤に対する補助金を提供し、全民健康保険による支給が可能になることで、一つの治療薬につき最大で年間200人ほどのがん患者を救えると見込まれています。また、がん化学療法によって引き起こされる副作用である嘔吐に対する治療薬についても、対象に追加されます。健康保険署は、「がん患者の経済的負担を軽減しつつ、より効果的な治療の選択肢を広げることを目指す」としています。
三つ目のケースについて。
病気の子供に対する新薬の支給も全民健康保険の対象になります。対象者は、高血圧、心不全、心筋梗塞による心機能不全や、1型糖尿病による腎疾患を患う子どもたちで、彼らの治療の選択肢が広がることとなります。
最後に四つ目のケースは、全民健康保険の対象とは異なるのですが、公費ワクチン、つまり政府がお金を出すため人々が無料で接種できるワクチンのうち、インフルエンザ抗ウイルス薬の接種の対象者が、8月から拡大されます。新たに追加された対象者は主に2種類に分けられ、一つは「産後2週間以内の女性のうち、医師の評価により迅速な投薬が必要とされた人たち」。もう一つは「18歳未満で、同年代の人より肥満と判断された子供たち」です。
台湾では現在、人々の約99.9%が日本の国民皆保険制度に相当する「全民健康保険」に加入し、2023年度におけるこの保険制度に対する満足度は脅威の91%に達しています。
そのため、台湾に暮らす台湾人のほぼ全ての人が、200台湾元(約1000円)ほどの自己負担費で医療機関の外来を受診できるほか、保険が適応する薬は別料金を払わず受診料を払えば受け取れます。
8月からは、この200元ほどの受診料を払えばより多くの治療を受けられるということで、全民健康保険制度は今後、台湾人の健康に更に大きく寄与していくことでしょう。
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二つ目の話題も、今月から新たに変わったことについて。
台湾の学校では二学期制を採用しており、一学期は日本のように4月からではなく、8月末から9月にかけてスタートします。
ということで、2025年度の学期は今の時期ちょうどスタートするわけですが、教育部(日本の文科省に類似)の新たな規定により、8月1日から、台湾の私立大学における兼任教員(=非常勤講師と呼ばれる、複数の学校や機関で勤務する教員)の時間給は、公立大学の水準を下回ってはならないことになりました。これにより、私立大学の兼任教員の時給は少なくとも780元(約3900円)、兼任助教授は855元(約4300円)となります。
これまで、私立大学における教員の時間給は著しく低い水準にあることが問題になっており、例えば私立大学の3分の2以上が、一つの大学のみで教鞭を取る「専任教員」の超過労働に対する時給を32年間一度も引き上げていません。
今月から私立大学における兼任教員の時間給が引き上げられましたが、私立大学に勤務する専任教員は今回の措置の対象外であり、依然として専任教員の時給は575台湾元(約2900円)、助教授は630元(約3200円)にとどまっています。
私立大学の主な収入源は、学生が払う学費と雑費ですが、現在深刻な少子化により多くの私立学校は長期的に赤字を抱えています。2020年度時点で104校ある私立大学のうち、44校が赤字となっており、赤字総額は29億7,900万台湾元(約150億円)を超えています。こうした状況下で、老朽化した校舎の建て替えや上昇する人件費への対応は困難になるだろうとの懸念もあります。2026年には私立大学の学生数が16万人にまで減少すると予測されており、何も対応をしなければ私立大の半数が閉校を余儀なくされるとの統計まであります。
そのため、教育部(文部科学省に相当)といった政府機関など外部からの支援を受けながら、“少子化”という環境変化に対応するための転換を進めることが求められています。
これから、働く側・経営する側・そして学ぶ側、その誰もが納得できる教育現場に生まれ変わることはできるのでしょうか?