今回は、日本のある有名俳優が主演であり、台湾と日本、そしてアメリカの共同制作による映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』についてです。この映画は日本では今月12日に公開されており、日本の俳優・西島 秀俊さんと台湾の女優でアジア各国の映画にも多数出演経験のある・桂綸鎂(グイ・ルンメイ)さんがダブル主演で夫婦役を演じています。
全編ニューヨークでのロケで、セリフの90%以上が英語という西島さんにとっては大きな挑戦となった同作品。ストーリーは、幼い息子が誘拐されたことをきっかけに口に出さずにいた互いの本音や秘密が露呈し、溝が深まっていくだけでなく、殺人事件まで巻き起こるという思いもよらない展開に翻弄される夫婦を描いています。誘拐事件の行方を力強く描写する一方、夫婦間の関係性を繊細に紡ぎ出し、最終的にふたりが目指していたはずの“幸せな家族”は再び戻ってくるのか?最後まで目が離せない作品です。監督を務めたのは、日本の映画監督・真利子哲也さん。真利子さんはこれまでも様々な社会問題を予測不可能な展開で鋭く切り込んだ作品を多く制作してきたのですが、今回は6年ぶりの最新作ということで、その公開が待ち望まれていました。
そんな『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』、なんと、北部・台北市で11月に開催される台湾最大の映画祭、「金馬影展(金馬国際映画祭/ゴールデンホースアワード国際映画祭/Taipei Golden Horse Film Festival)」の閉幕作品に選ばれたのです。金馬奨とは、1962年に創設され中華圏の映画賞の中で最も古い歴史を誇ると同時に、“台湾版アカデミー賞”とも呼ばれ中華圏の権威ある映画賞です。その閉幕作品に選ばれたということで、主演の西島さんは、「大変うれしく思う」とコメントを寄せています。また、映画祭に合わせて11月に台湾を訪問することも発表しており、妻役のルンメイさんや真利子監督と共に上映後のトークセッションに登壇することになっています。
さらに、同映画祭のその年最も注目されるべき映画人として、西島さんは“焦点映画人”にも選出され、映画祭では西島さんがこれまで登場した複数の作品の特集上映が組まれる予定です。
この“焦点映画人”、2023年には2023年公開の日本・ドイツ共同制作映画『PERFECT DATS』でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞した役所広司さんが選出されたことがあり、その際は役所さんの出演作7作品が上映されました。
ちなみに、今、金馬国際映画祭の閉幕作品を紹介しましたが、オープンニング作品も明かされており、今年11月に公開予定の台湾の映画「大濛」(A Foggy Tale)が選ばれました。同映画祭での上映が世界初上映となり、内容は、国民党政権が市民の思想や言論を弾圧した「白色テロ」が横行した時代に、人々が命を懸けて奮闘する姿を描いています。
今年の金馬国際映画祭は11月6日から23日までの開催となっており、チケットは10月26日に発売予定となっています。

(写真:台北金馬映画祭実行委員会提供)