今年の10月29日は何の日かご存知でしょうか?特に台湾のほか、中国、香港、ベトナムといった中華圏の国にとっては家族の無病息災や長寿を祝う、伝統的な節句に当たります。その節句とは「重陽節」です。中華圏の国では毎年旧暦9月9日に当たり、今年は今日10/29なのですが、祝日ではない通常の日です。現代の日本では「重陽の節句」と呼ばれ、9月の第3月曜日、つまり「敬老の日」に当たります。
なぜ旧暦の9月9日が「伝統的な節句」となったのか…。こんな諸説があります。
重陽節が生まれた古代中国において、奇数がつく日は縁起の良い「陽の日」とされ、奇数の重なる日を祝いの日と考えていました。そして陽の最大値、つまり奇数の最大値である「9」が重なる日を「陽が重なる日」という意味の「重陽」と呼び、節句の1つにしたといわれています。その一方、奇数が重なる日は陽の気が強すぎるため災いが起こりやすいとも考えられていました。そのため、よくないことが起きないようにと、旧暦の9月9日には、ちょうど見頃を迎え邪気を払う力があるとされる菊の花を飾ったり、菊酒(菊の花びらを浸した酒)を楽しんだり、秋の味覚である栗やなすなどを味わう過ごし方が良いとされてきました。
日本には平安時代初期に中国から伝わり、平安貴族を中心に季節の移ろいを知らせる節句として広まっていきました。重陽の節句は季節の花である菊を用いることから「菊の節句」とも呼ばれ、江戸時代には庶民の間でも広く親しまれる季節の行事となったとされています。
台湾では1974年に重陽節を“敬老の日”として制定し、毎年さまざまな祝賀イベントを通じて高齢者を敬う精神を広めてきました。一方でこんな日でもあります。それは、多くの神々の生誕日もしくは悟りを開いた日。例えば、台湾で最も親しまれている海の女神「媽祖様」や道教の神様・玄天上帝は修行を積み重ねて悟りを得たのち、旧暦9月9日に天へ昇り神さまになったとされています。そのため、重陽節には媽祖廟などで毎年盛大な祭典が行われたり、別の廟でも人々の厄除け・健康長寿を祈る儀式が行われるのです。
台湾では、重陽節の祝い方は旧正月ほど賑やかではありませんが、今でもいくつかの昔ながらの過ごし方が続いています。
主なものを紹介すると、一つ目は「山へ登る」過ごし方。これは、旧暦9月9日の重陽節は“登高節”とも呼ばれ、“9”は単一の数字の中で最も大きいことから、この日に高い所である山に登ることで、災いを避け、福を招くとされてきたからです。
二つ目は伝統的なお菓子「重陽糕」を食べる方法。「重陽糕」はもち米で作られ、上にはナツメやアーモンド、色付けされた果実の細切りや、栗などを飾り砂糖を加えて蒸し上げた甘いお菓子です。その見た目は華やかで、味わいも上品なため、古くから重陽節に欠かせないお菓子なのですが、「蒸したお菓子」を意味する中国語「糕」の発音が「高い」を意味する中国語「高」と同じことから、重陽節に重陽糕を食べることで、「向上心を持ちますます発展することができる」とされています。

⬆️重陽糕
三つ目の過ごし方は、祖先のお墓参り。重陽節に祖先を想い敬意を表すため、お墓参りを行う風習が残っています。また、この日に家族そろって食事をし、子どもたちが年長者と過ごすことで家族の絆を深めるのも一種の過ごし方とされています。
四つ目は、菊の花の鑑賞。台湾でも菊は重陽節の象徴的な花とされており、各地で菊の花の展示会が開かれ、美しい菊を観賞します。
なお、台湾の重陽節の祝い方は全国で一律ではありません。地域や民族によって異なる習慣があり、たとえば一部の原住民族の集落では、独自の行事が行われることもあるんだそうです。
また、政府機関や民間団体も、重陽節に合わせて高齢者を敬う活動を行います。たとえば、各県や市では、長年社会に貢献してきた年長者への感謝と敬意を表すため、「重陽節敬老祝い金」または記念品を配布しています。各自治体で支給内容は異なりますが、一部をご紹介すると、台北市では今年、85〜98歳の高齢者と75〜88歳の原住民族には3,000元(約1万5000円)を支給し、99歳以上の高齢者と89歳以上の原住民族に対しては10,000元(約4万9000円)+記念品を一人一人の家に政府の役員が個別訪問し直接手渡しました。ただし条件として、重陽節当日(2025年は10月29日)に、台北市に3か月以上住民登録がある必要があるということです。他の自治体では年齢の条件や支給額が異なりますが、今年に関しては台北市のお隣、新北市の支給額が最高で、100歳以上には2万元(約9万9000円)の祝い金を支給し、全国でも特に手厚い内容として注目されました。
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100歳以上の長寿者のことを「1世紀以上を生き抜いた」という英語から「センテナリアン(centenarian)」と呼びますが、中国語では「人瑞」と言います。
高齢化が進む台湾には現在、この「人瑞」がどれくらいいるのでしょうか?政府の統計によると、2024年9月時点で過去最多の合計5,542人に達しています。この統計の10年前の2014年には半数の2,525人で、さらに10年前の2004年にはわずか713人しかおらず、20年間で約8倍増加しました。
近年、年長者の中には元気に活躍され、私達にパワーと挑戦の勇気を届け続ける方もいらっしゃいます。
例えば今年、30歲以上なら誰でも参加できる4年ごとの総合競技大会「ワールドマスターズゲームズ(World Masters Games)」が台北市と新北市で開催され、世界107カ国・地域から、2万5千人以上が参加、その中で65歳以上が約2,000人、90歳以上が15人参加し、90歳以上のうち8人が台湾からの参加者でした。
最高齢はタイから参加した105歳の陸上選手、サワン・ジャンプラムさん。元学校長のサワンさんは、100メートルを38秒55で走り切りました。また、台湾からは、ギネス世界記録で「世界最年長バドミントン選手」に認定されている104歳の林友茂さんが出場。聖火ランナーの一人を務めたほか、50歳から始めたというバドミントンでエキシビションマッチに出場、なんと五輪バド男子ダブルスで2大会(東京、パリ)連続金メダルの李洋さんとペアを組み、林さんは打った3本を全て決め、11—9で勝利したのです。
ということで今回は、旧暦9月9日に当たる今日は、全ての高齢の方を敬い長寿を祝う日「重陽節」についてでした。