今週の数字は、、、
「15年」
台湾南部・台南市が、「直轄市」に昇格してから今年までの年数。
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台湾における直轄市とは、台湾の中央政府が直接管轄する都市を指します。「人口が125万人以上の、政治、経済、文化、都市圏の中心とされる重要な地域」が指定され、現在、北部の台北市、新北市、桃園市、中部の台中市、それに、南部の台南市、高雄市の「六都」と呼ばれる6つの都市が該当します。1990年代の民主化の結果、直轄市の市長は、日本の国会に当たる「立法院」に所属する立法委員と同じく住民による直接選挙によって選ばれています。
そんな直轄市としての台南市は、今日の数字「15年」前の2010年に旧台南県と旧台南市が合併して成立しました。直轄市への昇格後の面積は2,192k㎡、人口は約187万人、37区の行政区で構成されています。
直轄市としての台南市の初代市長に就任したのが現在の頼清徳・総統です。その政治は誠実、勤勉、効率が良いことで知られ、台南市に新たな風を吹き込んだとされています。2014年の台南市長選挙では、戒厳令解除後の県・市長選挙としては最高となる得票率72.9%を獲得して再選したほか、市長在任中に行われた県・市長の満足度調査では、何度も「5つ星」の評価を獲得しました。
実は、市長になる前の1998年に台南市選出の立法委員(国会議員)に当選しており、この時から専門性の高い政治への取り組みと地に足の着いた働きぶりが有権者に評価され、4期連続で立法委員に選出されたという背景があります。
そんな台南市ですが、直轄市に昇格して15年が経過した現在、ある問題を抱えています。それは、“7つの行政区の一部の道路に名前がつけられていない”こと。道路の名前というのは、例えば台湾国際放送の建物がある通りを「北安路」と言ったり、台湾でよく見かける「中正路」などを指しています。
問題とされている7つの区のうちの一つ、安定区は半導体や精密機械産業が集積している南部科学園区(サイエンスパーク)が跨(またが)っており、近年は他の地域からの移住者が増加し、住宅の建設が進むなど開発が急速に進んでいます。他には、後壁区、将軍区、北門区、大内区、左鎮区、南化区、龍崎区の一部道路も該当します。この今挙げた7区のうち、多くはまだ都市計画区域に指定されていない地域で、道路の命名が行われていないのです。では該当地域に暮らす住民の住所はどのように表示されているのかというと、道路名の代わりにその地区名や自然環境のみに基づき区別されています。
道路名が無い結果、カーナビなどで目的地を検索できないほか、警察などに通報する際や、郵便配達にも支障が出ています。そのため、他の市と比べても特に行政区域の混乱や地域の発展に支障をきたしていることが指摘されており、市は早急に改善策を講じる必要性があるのです。
現行の規定では、道路名の変更を行うためには、該当道路沿いの住民(戸籍上の世帯主)の5分の1以上の署名、さらに該当道路沿いの住民の3分の2以上の書面による同意が必要です。基準に達しない場合、1年間は再提案できません。これだと命名のための基準が高すぎます。
また、仮に道路名がつけられたとすれば、地元住民は住所を変更しなければなりません。そのため煩雑さなどを理由に多くの地元住民は命名を望んでおらず、作業の推進が難航しています。市としては、地元住民の慣習を尊重する方針ですが、もし名前のない道路沿いの住民から強い要望があれば、区役所など地方自治体と協力して地域の意見をまとめ、法に基づき正式に申請を受け付ける方針だと発表しています。
そんな中、最近新たに整備、命名された台南市の道路が議論を呼んでいます。
台南市の南区における再開発区域に4本の新しい道路ができたのですが、その名前はそれぞれ日本の友好都市に由来する「青森」「弘前」「那珂」と、オーストラリアの友好都市「ゴールドコースト」に由来する「黃金海岸」。市は、「友好都市の名称を用いることで国際的なつながりを示し、都市の知名度を高める意図がある」と説明していますが、市議会は一部の名前の「音の響きが縁起悪い」などという理由から、市に命名撤回を求める声を上げています。
例えば「青森」路の場合、中国語の発音が「自殺」の中国語「輕生」の発音と似ています。また「弘前」は、古典的・神話的表現で「死者の世界」を指す「黄泉(よみ)」の発音と「弘前」の中国語の発音が似ていて、「ゴールドコースト」は既存の地名と重複し混乱を招きやすい、と指摘されているのです。その上で市議会議員のうちの一人は「地名には地域の歴史や文化的意味を持たせるべきで、国際的なイメージや友好都市の記念のために無理やり付けるべきではない。道路は市民が使うものであり、一部の政府の役員だけで決めるべきではない」と述べたほか、別の議員からは「市は事前に地元議員や住民と十分に議論せず、地元の声を尊重していない」と指摘。「友好都市を記念するために、地元住民の感情を犠牲にしてはいけない。歴史的背景や住民の認知度が高い名前を選ぶべきだ」と強調しています。また、住民の中には「命名が住民の同意を反映していないなら、いっそ『トランプ路』や『アメリカ街』でもよいではないか」と冗談交じりに語る人もいるんだそう。
ちなみに、政府によると、「青森」と「弘前」を選んだ理由として、二つの市はリンゴ産業で知られている。中華圏では、リンゴは「平安」・「幸福」・「豊穣(穀物が豊かに実ること)」を象徴することから、地域に温かく前向きな意味をもたらすことを期待するためだと説明。また、茨城県の那珂市とオーストラリアの都市、ゴールドコースト市はいずれも海沿いの都市で、南区の該当道路がある地区の地理条件と類似していることを理由に挙げています。
今回の指摘を受け、市は今後も住民の意見に耳を傾け、将来の命名作業に反映させる方針を示しています。
台南市は台湾で最も早く開発された歴史を持つ「古都」である一方、直轄市となり現在は180万人が暮らす台湾第4の都市です。歴史的建造物と現代的な都市景観が融合する、そんな台南ならではの特色も考慮して、今後の命名作業が行われていくと良いですね。