現在、コンビニエンスストアやスーパーといった多くの人が買い物で日常的に利用するお店では、自分でレジ打ちをした上でお金を機械に入れると、自動的に精算してくれるセルフレジが増えています。また、レストランで料理を注文する時も、店員を呼ばなくても自分のスマホや店内に置かれた端末を通して便利に注文できるお店が増えています。
台湾も例外ではありません。私が新型コロナウイルス流行前に大学進学のため台湾に来た時は、今ほど多くのお店やレストランでこのような店員とのやりとりがなくても買い物や注文ができてしまうということはなく、よく難しい中国語の料理名を自分で頑張って読み上げて注文していました。今思うと言語の練習になっていたなあと感じます。また、高齢社会の日本や台湾ではまだまだ新たなやり方に慣れなかったりそもそもスマホを利用しない年配者もいると思います。
ただ確かに、店員さんが忙しい時でも機械やスマホを使い自分のペースで会計や注文ができる現代ならではのやり方も有り難いので、どちらの方法が良いかは、人によってそれぞれです。
少子高齢化が世界の中でもとりわけ進む台湾では、労働者不足が避けられない問題となっています。そんな時代でもコンビニエンスストアの店舗数は増えており、経済部(経済産業省)の統計によると、2025年8月の店舗数は1万4236店にのぼり、前年の同じ時期と比べ3%増加、2010年から15年間でみると49%も増加しました。2010年から15年間の日本での伸びは28%だったことを踏まえると、どれだけここ数年で台湾のコンビニが増えたかが分かります。しかも人口当たりの店舗密度も日本より高く、2025年7月時点で日本が2180人あたり1店舗なのに対し、台湾は1,659人あたり1店舗となっています。
さらに、台湾のコンビニ業の売上高も増え続けており、2010年以降、コロナの影響で2021年に減った以外は、2024年まで右肩上がりで増加。2025年も引き続き過去最高を更新する見通しです。コンビニ店舗の展開は以前までの都市部に集中した出店から、近年は郊外に向けて拡大する傾向があります。また、サンリオやスヌーピーといったキャラクターとのコラボや、台湾の航空会社「スターラックス」とコラボしたユニークな店舗もあり、こういった店舗では限定グッズを購入できたりそこでしか撮れない写真を撮れたりなど、買い物以外の目的でも是非訪れたい魅力満載の場所となっています。
台湾のコンビニ業売上高が増えている背景は他に、人手不足解消のための経営のデジタル化も要因にあるとされています。
店舗密度が韓国に次ぐ世界第2位とされ、台湾人にとってなくてはならない存在のコンビニは、少ない労働力でも常に効率的で顧客満足の高いサービスを提供できるようにしなければなりません。そこで、台湾では最新のテクノロジーを導入した未来型店舗が次々と誕生しているのです。
例えば、台湾で店舗数が最多の「7-ELEVEN」では、2018年から毎年1店舗ずつ「X-STORE」と呼ばれる最新の無人店舗を出店し、先端技術の実証と実用化を推進。これまでに台湾各地に9店舗を展開し、そのうち5店舗が学生や若い世代の客層が多い大学などのキャンパス内に設置しています。デジタル世代の若者層は新しいテクノロジーや決済手段を自然に使いこなしているといい、実際、かつて南部・高雄市の街中にあった「X-STORE」の3店舗目を後に市内の国立高雄科技大学内へ移転したところ、売上が2倍に伸びた例もあります。
なお、「X-STORE」は7店舗目から工業技術研究院(ITRI)と呼ばれる国際レベルの科学技術の研究開発機関と技術提携を行っています。そして、今月13日、9店舗目が北部・桃園市の国立中央大学にオープン。「X-STORE 9」では初めて工業技術研究院のAI 映像追跡技術を導入、同時にわずか約25坪の店内に140台を超えるカメラも設置し、客の動線や商品の取り出しといった細かな動作までリアルタイムで把握します。決済は商品を手にしてからスマートフォンで完結し、バーコードの読み取りやレジ待ちは不要、最短30秒で買い物を終えることができるといいます。前世代の「X-STORE 8」では商品棚に約1,300個の赤外線と重量センサー付きの特殊な棚を取り付ける必要がありましたが、「X-STORE 9」ではこれを廃止し、店舗運営コストを大幅に削減。大規模な店舗展開が可能となる優位性を確保しました。また、取り扱い商品数は約6,000アイテムにまで増加。一般の7-ELEVEN店舗にほぼ匹敵する水準まで充実した品揃えとなりました。
「7-ELEVEN」は、複数のAI応用技術を導入した店舗をこれまでに延べ4,000万人以上が利用してきたと発表しています。
一方、台湾での店舗数第2位のファミリーマートも負けていません。
こちらは、「商品を手に取った後、そのまま店を出るだけでいい」をうたう未来型店舗をすでに桃園市の工業園区内に正式にオープン。「7-ELEVEN」の「X-STORE9」と同様、客は商品を選んだ後、レジでの精算作業を行う必要がなく、待ち時間ゼロの買い物体験ができます。
その仕組みは、天井にAIが導入されたカメラを、そして商品棚には重量センサー付きの棚を複数配置したことで、客の行動をリアルタイムかつ正確に認識。これにより、顧客専用の「見えないショッピングカート」を実現しています。同時に、万が一、商品が誤った棚に置かれた場合もAIが検知し店舗に通知したり、AIがリアルタイムで在庫を照合することで、結果、店員の作業の効率化に貢献します。
では客はどのようにこの店舗を利用すれば良いのか、具体的な手順を説明すると、
まず携帯端末で「FamilyMart」アプリの会員に登録し、クレジットカードをモバイル決済サービス「MyFamiPay」に紐付けます。そして入店前に「FamilyMart」アプリを開き、今いる店舗を選択するほか、アプリ内のQRコードを入店前に通る必要のあるゲートにスキャンして入店。商品を選んだ後は店舗側がAI技術を利用して何の商品を手にしているのか把握しているためそのまま店を出ることができ、自動で決済が完了する、という流れです。
こういった未来型無人店舗の全面的な普及については関心が高まっていますが、台湾の「7-Eleven」を運営する小売業者「統一超商(プレジデント・チェーンストア)」を子会社にもつ、台湾最大の食品・流通・小売などのグループ企業「統一企業」の羅智先(アレックス・ルオ)董事長は「台湾の消費者は依然として店員によるサービスを好む傾向がある」と指摘。その上で「無人店舗の取り組みは止まらない。今後も年1店舗のペースで展開を続けていく」と話しています。
皆さんは未来型店舗の増加を、どう捉えるでしょうか?

桃園市の国立中央大学内にオープンした、「7-ELEVEN」の未来型店舗「X-STORE 9」

桃園市の工業園区内にオープンした、ファミリーマート未来型店舗