台湾は超高齢社会、つまり65歳以上の人口が総人口の20%に達する時代に突入しています。そのため現在、医療業界、その中でも「医薬品産業」と呼ばれる、認可されている医薬品の開発から生産、市場販売までの一連の産業に関わる人材の不足と産業構造の転換という課題に直面しているのです。
そんな中、台湾南部・台南市に本部を置く私立総合大学・嘉南薬理大学の薬学部は学生の視野を広げ、国際的な経験を取り入れることを目的に、先日、学生を率いて日本の仙台および東京を訪れ、8日間にわたる「海外現地研修」を実施。現地での視察を通じて、日本の医薬品制度や先進的なテクノロジーの活用を深く理解し、台湾の医薬品産業転換に向けた学びの場となりました。
視察の初日は、東日本大震災の被災地に位置する宮城県仙台市宮城野区の「東北医科薬科大学病院」を訪問。同病院は長年にわたり災害医療体制の構築に取り組んでおり、学生たちは災害発生時における薬剤師の重要な役割、そして医薬品の安定供給などを具体的に理解する機会となりました。
その後、一行は東京都八王子に本部を置く私立大学・東京薬科大学および「株式会社八王子薬剤センター」へ移動、地域薬局の運営モデルを実地で視察しました。薬剤の供給や薬学生・薬剤師の教育の振興、地域医療の向上に寄与するため活動する八王子薬剤センターにおいて、学生たちは無菌調剤室とロボットアームによるピッキング(=薬の取り出し)作業を組み合わせた自動で薬を梱包するシステムを間近で見学。薬事業務のプロセスに高度なテクノロジーが導入されている様子に驚いたといい、参加者の多くは、こうしたスマート化された設備こそが、人手不足への対応やサービスの効率向上を図るうえで台湾の薬局が今後進むべき重要な方向性だと口をそろえました。また、東京に本社を置く1969年創業の老舗漢方専門店「薬日本堂」が、漢方を現代的なデータ管理や洗練されたカウンセリングと融合させた革新的なビジネスモデルを展開している点も、健康産業の新たな可能性を示す事例として注目を集めました。
参加者の一人は今回の研修を経て、「日本の薬学教育は基礎が非常にしっかりしていて、専門職である薬剤師に根付く“職人精神”が強く印象に残った」と強調。日本では、薬を交付する際に時間をかけて丁寧な服薬指導や健康教育を行うことが一般的であり、短時間で薬を受け取る台湾のスタイルとは対照的だといいます。
もう一人は「日本の地域薬局は規模が大きく、設備も充実している。ロボットによる自動化により、業務効率とサービス品質の双方が大幅に向上している」と分析しました。
台湾と日本の制度を比較する過程は、参加者の単なる知識のインプットにとどまらず、台湾における関連業界の革新について深い思考を促すものとなりました。