ここ数年、日本、そして台湾でも物価上昇が続いています。日本に関しては、総務省が毎月発表している、家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる消費者物価指数(CPI)をみると、天候による変動が大きい生鮮食品を除き過去5年で物価が約12%上昇、今年1月の指数は1年前の同じ月と比べて、2%上昇しました。食料品に関しては5年前と比べて価格が2割~3割上昇しているということで、早くこの状況が収まって欲しいところです。
では台湾はというと、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数上昇率は20か月連続で2%未満となり物価上昇の勢いは緩和しています。今年1月の消費者物価指数は1年前の同じ月と比べて0.69%上昇し上昇率は過去5年で(つまり2021年1月以来)最低水準に。これで9か月連続でインフレ警戒ラインとされる2%を下回りました。とはいえ外食費の継続的な上昇に加え、家賃や鉄道運賃、ガス・電気料金などの引き上げなどによりまだまだ今後の生活に楽観視はできない状況です。
そんな台湾では最近、意外にも、高級志向のビュッフェスタイルのレストランの人気が高まっています。ビュッフェは日本では「バイキング」とも呼ばれ、好きな料理を好きな分だけ取り分けて食べる食べ放題形式の食事のことなのですが、台湾では1人あたり2000台湾元(日本円で約1万円相当)を超える価格帯にもかかわらず、予約受付開始直後に枠が全て埋まる店舗もあるほどなんです。しかも今年に入り、ビュッフェ各店は食材費や人件費、運営コストの上昇を受け再度値上げに踏み切りましたが、それでも需要が衰えるどころか人気店では出店拡大が続き、市場は「需要が供給を上回る」状態に。つまり「値上げしても客足は落ちず、むしろ店舗は増えて人気になる」という不思議な現象が起きているのです。専門家はその背景に、食べ放題は以前からの台湾特有の外食文化の一つであり、消費者が重視するものとしてすでに「量」から「質」に移行していると分析しています。
あるビュッフェ店の担当者は、単価が2000元の大台を超えた後、消費者の目標は「元を取る」ことから「高級食材と驚き」を追求することに変わったとも指摘しています。
現在、台湾の飲食市場は「自炊」「インスタント食品・宅配」「実店舗」の主に三つに分けられます。自炊がコロナ流行時に比べて縮小し、インスタント・宅配が低価格と利便性を武器に急速に拡大する中で、中価格帯路線の実店舗が最も影響を受け、最も容易に取って代わられ淘汰されやすい存在となっています。そこで「実店舗」は高級路線か低価格路線かの「M型」構造への転換を余儀なくされている市場環境があるのです。台湾の消費者は価格が高いのを嫌うよりもコストパフォーマンスが悪く金額に見合わないことをより嫌う傾向にあるため、安くておいしい店にするか、いっそのこと高級路線に振り切るかのどちらかの方針で展開を進める企業が増えているのです。また、台湾の消費者は体験・品質・信頼感を重視し、それら納得できるものに対しお金を払いたいとする傾向があります。こういったことこそが、物価高や値上げの波の中でも高級志向のビュッフェが競争を恐れず店舗を拡大できている理由なのです。
例えば、台湾の5つ星ホテル「グランドハイライホテル(漢来大飯店)」などを手掛けるグループ傘下の企業「漢来美食(ハイライフーズ)」が展開するビュッフェレストラン「島語(アイランド)」は、休日のディナー価格が2090元(約1万190円)に達しています。それにも関わらず、昨年末に北部・桃園市にオープンした3店舗目は、開幕後2カ月間の予約が、オープンしてからすぐに埋まってしまいました。
他のビュッフェレストランも価格が上昇し続けているにも関わらず人気が拡大しているということで、これからも、「質」を求めコストパフォーマンスを重視する台湾での高級ビュッフェの競争は続きそうです。

台湾の高級ビュッフェレストラン「饗饗INPARADISE」(写真:CNA)
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先ほど、高級ビュッフェの話題をしましたので、次は「高級な列車」の話題に参ります。
台湾南部・嘉義県の景勝地、阿里山などを走る観光列車「阿里山鉄道」は最近、新たにハイクラスの新型車両「森里号」を導入しました。現在は今年7月に嘉義駅―阿里山駅間で営業運転を開始できるようにするための試験走行を行っている段階です。森里号は主に、阿里山鉄道のサービスと輸送力向上を目的に政府の支援を受けて新たに設計・製造された車両で、試験運転が順調に進み7月から営業を開始すれば、嘉義駅から阿里山駅までの直通列車が1本増え、既存の「阿里山号」と合わせて、阿里山駅までの直通列車は1日2本体制となります。「森里号」は最終的に機関車5両、客車26両が導入され、6月までにすべて納入される予定です。9月から10月にかけて全ての車両が順次運行を開始し、より柔軟なダイヤ編成が可能になるということです。
高級志向の列車ということですが、外観は黒の蒸気機関車と赤のディーゼル機関車の伝統的な配色を継承し、「ブラック、レッド、ゴールド」を基調に、阿里山の日の出のイメージを取り入れています。座席数は「阿里山号」の108席から97席に減らし、ゆとりある空間を確保。山岳路線に対応するため、より強力な新型エンジンを搭載し、急勾配や高地でも安定した出力を維持できる構造です。このほか、車内内装やトイレ、照明、空調、音響・映像放送、監視システムも全面的にアップグレードされているということです。高級列車としての位置づけから、運賃は「阿里山号」と差別化される予定で、正式な料金は交通部(日本の国土交通省に類似)の認可後に発表されます。この「森里号」により、百年の歴史を持つ山岳鉄道が新たな時代へ踏み出すことになりそうです。
食の体験も旅も、たまには日常とは違う高級感を味わってみるのも良いですね。

観光列車・阿里山鉄道のハイクラス新型列車「森里号」。(写真:CNA)